アニマルウエルフェア連絡会

人と動物との適切な関係づくりを考えます。
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地域猫対策・市民の思いと役所やメディアとの違い

 十数年も前の事、読売新聞が「地域が飼い主地域猫」と報道し「地域猫」の言葉が社会で使いやすくなりました。同じ頃に取材にあたったTVディレクターは「地域猫対策は清掃と対話」と語りながら番組にし、地域猫の言葉が先走りしました。

 今のメディアは十数年前と似て、地域猫対策を「野良猫を地域で管理」などと定義する場合が多いです。役所も「野良猫の適正管理が地域猫活動」などとして、自由で任意な市民行動の管理を施策にする場合が増えました。

 野良猫の飼い主権利や飼養の責務を市民に与える権限が役所にはありません。従って、地域が飼い主でも市民による野良猫の適正管理とも異なります。国のすすめる地域猫対策とは、「地域猫活動を行う市民」に地域行政が野良猫対策を委託する施策でもありません。

 人の近くに棲み続ける愛護動物の猫がいなくなった歴史はありません。野良猫がいると餌をあげる市民もいなくなりません。そこで国は、恣意的な餌やりのもたらす結果について、各地方自治体は地域猫対策を執行するように決めました。恣意的つまり身勝手な餌やりを、無責任と読み違えた自治体は餌やり禁止を施策にしたがりますが、餌やり禁止では猫問題が解決しません。

 

 少しややこしくなりますが地域猫対策とは、現行法上では殺す事もよそに捨てることもできない愛護動物の野良猫の、自由な生態循環を役所の施策として極めてきつく抑える、人々の作為と言えます。

 その具体的な方法は既に知られている通り、野良猫を捕まえて繁殖制限手術をして元のテリトリーに戻す、トラップニューターリターン、TNRの仕組みの執行です。野良猫迷惑を思い感じる多くの市民は、TNRの実行でその思いが少なくなる事が分りました。

 そこで役所は大きな壁に当たりました。例えばネズミの対策には、役所が専門の事業者に委託しながら、主に保健所が担当して地域での対策説明会などを開きます。

 しかし役所が猫のTNRを委託する事業者がいませんので、猫を身近に思える一部の市民の思いや行いに着目した役所やメディアは、その人たちに仮の飼い主や、適正管理の活動を委ねる施策をすすめます。このような役所の事務の推進は獣医資格を持つ職員を置く保健所や、環境保全の所管などが担当しているようです。冒頭の様に、役所には市民に野良猫の飼い主権利や適正飼養の責務を与える権限がないにも関わらずです。

 

 TNRを委託する事業者の仕組みを持たない役所は、猫を身近に思える一部の市民のネットワーク作りなどをすすめることで、野良猫迷惑の思いの原因ともいわれるふん尿の始末などのほか、TNRの実行もこのネットワークなどの活動と位置づけ、そのような活動者の管理を地域猫対策施策とする事態が増えました。

 「地域が飼い主地域猫」から十数年後の現在に至り、役所やメディアに対する疑問が明らかになりました。「役所が主体で執行しなければならない野良猫対策」を、「猫を身近に思う一部の市民」の活動を管理する施策とすることに対する、役所と市民の間の思い違いです。

 

 役所やメディアは「野良猫の棲息を管理」することに加え「地域猫対策実行の市民間の合意形成の成立」を、一部の市民に委ねて強いる施策の思い違いを見直さなければいけません。

 地域猫対策の執行管理は現行法上の役所の事務で、一部の市民に対する無償の委託活動ではありません。メディアも事態の真相を検証した報道に努めなくてはいけません。

 

 それにしても十数年前に比べると、地域猫活動を行う市民は全国各地で格段に増えています。「地域猫対策施策」を役所や市民と恊働で上手にすすめているボランティアリーダーも多くなりました。

 役所が思い違いを適切に考え直し、役所自らが責務を負う行政施策とするとき、地域猫対策施策はすごくすすみやすくなります。真逆に、地域猫活動を行う市民を管理することや、野良猫の適正飼養管理などから役所の思いが離れないとき、地域猫対策は成立しません。

 その理由は、猫にそれほど関心を持たない大多数の市民と、この施策についての合理的な整合性を得ながら合意を目指しての実行は困難だからです。関係ないと感じる市民との折衝は、この施策の責務を担う役所ならではの執行事務です。公正な公共性のもと、役所やメディアは社会的責任としても、地域猫対策の見直しの時期にかかっていると思うのです。

 

      平成30年9月 アニマルウエルフェア連絡会共同代表 伊東司

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